西伊豆 & ANGLER(にしいずアンドアングラー)

健康に意識して生活を一変。お試し移住期間の2週間を待たずして、1週間で決断。
健康に意識して生活を一変。お試し移住期間の2週間を待たずして、1週間で決断。

椎橋夫妻

椎橋豊/2017年1月移住
椎橋孝子/2019年3月移住

突然訪れた人生の転機。椎橋夫妻の決断

「アコウダイやアブラボウズ、などを釣るために、大きな魚に対応したリールを購入したんです」そう笑顔で話すのは、西伊豆に移住し、セカンドライフとして漁師業を営む椎橋豊さん・孝子さん夫妻だ。

もともと新婚旅行で釣りをするほど大の釣り好きで、夫妻揃って船舶免許も所有。移住前は、群馬県で建築業を営み、冬は山で狩猟、夏は海で釣りというサイクルを楽しんでいたという。ただ、思わぬかたちで転機が訪れた。

「今まで射撃を教えてくれていた方が亡くなってしまって、山に行かなくなってしまったんですね。海のほうも、最初は茨城県の大洗、次に新潟県の上越のマリーナ、そして神奈川県の江ノ島では県の許可を得て川の係留施設に船を置き、釣りをするときにだけ車で通っていました。しかし長距離運転を繰り返した結果、血圧が200を超えてしまい、ドクターストップがかかってしまって……。親しい知人がいなくなり、私自身も健康に意識を配らなくてはいけなくなってしまったので、それなら残りの人生を自分のやりたいことに費やそうと。妻と一緒に海の近くへ移住して、漁師として暮らしたいと考えるようになりました」(豊さん)

そうして候補地をピックアップし、たどり着いたのが西伊豆だった。なぜこの地を選んだのだろうか。

「いくつかの土地を巡りましたが、西伊豆は雰囲気が特に良いと感じたんです。自分の気質に合っているなと。人が少なくて静かだし、水も綺麗。しかも海の近くを歩いていると、街の人がとてもフレンドリーに声をかけてくれる。ここに移住したいと直感的に思いました。そこで道端でテングサを干しているおばあちゃんに声をかけ、西伊豆に移住するにはどうしたらいいのかを尋ねたんです。そして紹介されたのが漁協でした」(豊さん)

2週間のお試し移住で、西伊豆の暮らしを体験

行動派な豊さんは、さっそく漁協に連絡。本気度を示すために「西伊豆で漁師になりたい」と直談判した。後日、漁協の運営委員長や担当者と会う場が設けられ、漁業権に関する説明があったという。そして、2週間のお試し移住がはじまった。

「西伊豆での生活を実際に体験できる『西伊豆お試し移住住宅』という制度があるんですね。それを利用していろいろ調べ回りました。その期間に仁科(にしな)はもちろん、安良里(あらり)や田子(たご)といった西伊豆の他の地域や、南伊豆の下田のほうにも足を運び、家や海、船を置く場所などを確認したんです。なかでも仁科は住環境が整っているだけでなく、港の船置き場に水門が設置されていて、台風などで海が荒れた場合でも船を守ることができる点が魅力的でした。それで期限の2週間を待たず、1週間ほどで移住を決めてしまいました」(豊さん)

早々に移住した豊さんとは反対に、妻の孝子さんは移住を果たすまでに約2年の歳月を費やしたという。その期間は、月の半分を西伊豆で過ごし、残りの半分を群馬で過ごしていたそう。なぜそのような2拠点生活を送っていたのだろうか。

「移住することが急に決まったのですが、私は当時いけばなの研究会で委員を務めていて、任期が終わるまで待つ必要がありました。また茶道サークルの代表も務めていたので、代表も交代しなければいけません。他にも地域の婦人会や防犯活動にも参加していて、引き継ぎすることがたくさんあったんです」(孝子さん)

そうした残務を整理した後、孝子さんも本格的に西伊豆へ移住。こちらでも町内会長を務めるなど精力的に地域活動に携わっている。

西伊豆で実現した、悠々自適な生活

そんな椎橋さん夫妻が住む家は、目先に船置き場がある好立地。空き家を自分たちで修繕して暮らしている。毎朝、敷地内にある防潮堤に登り、海の様子をチェックするのが豊さんの日課だ。

「波の高さを目視できるのが良いんですよ。状況次第で漁に出るかを考えるわけです。港の近くは、特に波の影響を受けやすいので」(豊さん)

また広々とした庭では、孝子さんが野菜を育てている。
「年間スケジュールを立てていて、5〜6種類くらいの野菜をシーズンごとに食べられるようにしています。この春にはナスやキュウリの苗を植えました。今から夏の収穫が楽しみです」(孝子さん)

野菜だけでなく、群馬の家にあった蜜柑や胡桃の木を軽トラックで運んで植樹。
そこにアボカドやプラムの木も加え、実が成るのを心待ちにしているそうだ

自分たちで理想とする住環境を整え、悠々自適な生活を送る椎橋夫妻。ともに高齢ということもあり、健康に一抹の不安はあるものの、群馬に住んでいた頃に比べると健康状態も良好だという。

「夫は喘息持ち、私も気管支拡張症を患っているんですね。しかも群馬にいた頃は、近所に自動車工場があり、排気ガスの影響で咳が止まりませんでした。そのときは薬でなんとか抑えていましたが……。西伊豆に移住してからは、空気が良いからか咳をすることもなくなり、快適に過ごせています」(孝子さん)

70歳を超えても挑戦者。釣り探求の道は続く

暮らしはもちろん、釣りも充実している。漁協の運営委員長の紹介で、新たな釣り船も入手した。

豊さんがはじめて船を手に入れたのは1998年頃。それから3台所有し、今の船で4台目。初代からタートル、ボス、さくら、大豊丸と名前をつけている

この船に夫妻で乗り、海釣りへ。釣ったイカを船上で一夜干しして食べるのが極上だという。

「これまで所有していたものと比べると、乗用車とダンプカーくらい差があるくらい大きな船です。それだけに扱いがやや難しいですが、海が多少荒れていてもそこまで揺れないので助かっています」(豊さん)

最近になってようやく西伊豆の釣りのやり方がわかってきたという豊さん。他の漁師に混ざって釣りをすることで、専門的な知識や技術が着実に身についているという。また、漁業権を得たことで、できることの幅が格段に広がったそうだ。

「群馬に住んでいた頃は年に数回しか釣りができませんでしたが、現在は時間もたっぷりあるので、天気が良ければ毎日のように漁に出ることができます。だから、昔と比較したら格段に技術が向上しました。私自身、これまでの20数年は一体なんだったのかと思うくらいです(笑)」(豊さん)

そんな豊さんの目下の狙いは、深海魚だ。そして、探求は続く。

「駿河湾は海が深いから、深海魚がよく釣れるらしいんですよ。ただ、漁獲できる場所がまだわからないので、誰かに教えてもらってから挑んでみたいと考えています。そのほかにも、これまで釣ったことのない大物に挑戦してみたいですね。せっかく大きなリールを購入したんですから」(豊さん)

深海1400mまで届く巨大なリール。駿河湾で大物を釣り上げるために購入したという

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移住を検討している方にアドバイス

家の修繕をする際に補助金を利用できるので、詳細について確認してみてください。また、海が近いエリアになりますので、地震や津波に対する防災への備えが欠かせません。地域の避難訓練への参加はもちろん、万が一のときのことを考えて準備を怠らないことが何より大切です。

椎橋豊

2017年1月移住

椎橋孝子

2019年3月移住

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