西伊豆 & ANGLER(にしいずアンドアングラー)

毎週末の西伊豆通いを約3年続けていたら、自然と知り合いが増えて移住を決心。
毎週末の西伊豆通いを約3年続けていたら、自然と知り合いが増えて移住を決心。

小山優香

はんばた市場従業員
2018年移住

神奈川から毎週末のロングドライブ!? 約3年通った西伊豆釣り旅行

はんばた市場で働く小山優香さんが釣りを楽しむようになったのは、もともと釣りを趣味にしていた夫・純也さんの影響だった。

「20代前半の頃、2人で沖縄を旅行したときに堤防でアオリイカ釣りを体験したんです。最初は何をやっているのかわからない状態で、それこそなすがままだったのですが、ビギナーズラックで2キロぐらいある大物がヒットしてしまって(笑)。残念ながら網に入れる前に逃げられてしまったのですが、釣りの楽しさを知りました」

以来、釣りは2人の共通の趣味に。当時住んでいた横浜近郊の海や川で、ルアーフィッシングを楽しむようになった。「自分がこれほど釣りにハマるとは思いませんでした。外に出るのが嫌いだったわけではないのですが、その頃はゲームばかりしていたので」と小山さんは笑う。

西伊豆に通うようになったのは、釣りの楽しみを知るにつれ、もっといろんな種類の魚を狙ってみたいと思ったからだという。

「最初は伊豆半島の別の地域で釣りをしていたんですけれど、行き尽くしてしまった印象があって。それで西伊豆にも足を運ぶようになったんです。そうしたら、海の透明度が高いし、静かだし、人も多くないから過ごしやすくて。しかも、西伊豆は年に1度渋滞するかしないかくらいで通うのにも便利でした」

すっかり西伊豆が気に入った小山さん夫婦は、それから3年ほど毎週末をこの地で過ごすように。往復で約400km、毎回3時間程度かけて通うのは大変そうだが、辛くはなかったという。

「釣りはもちろんですが、それ以上に西伊豆を訪れることが楽しくて。なんなら、雨で釣りができないときも来ていましたから(笑)。半分旅行みたいな気分だったんですよね。釣りをして、ご飯を食べて、昼寝をして、温泉に入って、スーパーでお惣菜を買って車内で宴会をしてから寝るみたいな。決して贅沢ではありませんが、それでも充実した時間を過ごしていました」

宿泊は、もっぱら車の中。大浜海水浴場の駐車場が、お決まりの寝床だった。

「目の前に海がある最高のロケーションで、見晴らしが素晴らしいんですよ。それだけでなく、駐車場も広いし、トイレもあるし、大浴場もスーパーも近いから不便しません。」

知り合いが増えることで、安心して取り組めた移住計画

小山さんが西伊豆に越してきたのは、5年前の2018年のこと。何度となく通ってるうちに知り合いが増え、いつしか移住の話が持ち上がるようになったという。

「あるとき、地元民が集まる居酒屋で、店長さんと仲良くなったんです。その日は釣りの話で盛り上がったのですが、3カ月後くらいに再び足を運んだら話の内容を細かく覚えてくれていて。それから頻繁に通うようになり、観光協会の会長さんをはじめ、地元の方々を紹介してくださるようになったんです。それで輪が広がりました。しかも、移住の話が持ち上がるのと同じタイミングで地域おこし協力隊の新規メンバーを募集していたので、お試しの気持ちで夫と2人で暮らしてみることにしたんです」

こうして西伊豆に移住した小山さん夫婦。もともと2人はエンジニアとして働いていて、観光業に携わった経験はゼロだった。不安はなかったのだろうか。

「2人ともこだわりがあってエンジニアをしていたわけではなかったので、転職に対して大きな抵抗はありませんでした。だから、本当に勢いで飛び込んでしまっていて(笑)。ただ、西伊豆に知り合いがいたことは大きかったかもしれません。手厚くサポートしてくださったので、それほど不安になることもなく、移住することができました」

2人の住まいは、思い入れの強い大浜海水浴場からほど近い場所にある2階建ての一軒家。知り合い経由で不動産屋を紹介してもらい、見つけたという。

「2軒紹介されたんです。1つは今の家で、もう1つは山沿いの家。海に近いほうが良いと思い、内見したその日に契約しました。でも、1階に4部屋、2階に2部屋、屋根裏に2部屋もあって完全に持て余しています(笑)」

玄関を入ってすぐの場所に竿やタモ、道具を入れるバッグなどが置いてある。また新しい道具も徐々に増えているという

西伊豆の暮らしにも慣れ、仕事前にも釣りを満喫する日々

移住から1年後、純也さんは観光協会の事務局員に。小山さんもはんばた市場(※)で働くようになった。

「実は私、釣りと同じくらい魚も好きなんです。はんばた市場にいたらいろんな魚を見たり、食べたりできると思ったので、自分に合っているんじゃないかなと思いました。現在は鮮魚部で週5日勤務しています」

はんばた市場で働くようになってからは、魚のさばき方や盛り付け方も身につけた。定番の三枚おろしはもちろん、大名おろしや姿造りなどもできるようになったという。

「最初は素人以下だったんですけれど、少しずつ覚えていきました。ただ、私と先輩方では切り方も盛り付け方も美しさが全然違うので、もっと上手にできるように頑張りたいですね」

小山さんは現在、純也さんと一緒に早朝の時間や休日を利用して磯釣りを楽しんでいるという。狙う魚は季節によってさまざまだ。

「できれば大きいものを狙いたいんですけれど、やはり釣れたほうが楽しいので、時期ごとに釣りやすい魚を狙っています。冬はヒラスズキ、夏はアカハタやカンパチなども」

磯釣りでワラサ、ソウダガツオ、カンパチなども狙えるという。
ちなみに、釣りの最中は2人ともひたすらルアーを投げているので、口数は少なめだとか

引っ越してから3年ほど経った2021年には、漁業権も獲得。獲れた魚を食べるだけでなく、はんばた市場に持ち込んで売れるようになった。また最近は、小型の釣り船も手に入れたという。

「はんばた市場で働いていると、磯からだと狙えないような魚を漁師さんたちがたくさん持ってくるんですよ。海の深いところにいるアマダイとかイトヨリダイとか。それで次第に、自分で船を持っていろんな種類の魚を釣ってみたい気持ちが湧いてきて。そんなとき、知り合いの漁師さんが船を安く譲ってくださると言うので、思い切って購入することにしました。漁師1本で生計を……というほどではありませんが、趣味である釣りが収入の一部になるし、自分の釣った魚を地域の人に食べていただくという形で貢献できるのも嬉しいんですよね」

船名は「ホーク丸」。青・白・赤のトリコロールのカラーリングが特徴だ。
「小山は旧姓で、現在は鷹野なんです。だから鷹を英語にして『ホーク』。船体は、ホームセンターでペンキを買って自分で塗装しました」

月日を重ねる中でさらに釣りを楽しむようになっている小山さん。今後も変わらず西伊豆での生活を満喫していきたいと話す。

「役場、電気屋、スーパー、郵便局、ドラッグストア、病院など生活に必要なものはひと通り揃っているので、本当に住みやすいんです。今は西伊豆に骨を埋めるくらいの気持ちでいます。それに船を手に入れたことで、魚はもちろんサザエなども獲れるようになるので、本格的に漁師にも挑戦してみたいですね」

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移住を検討している方にアドバイス

西伊豆は遊びに来るのと移住するのでは見え方が変わるので、少しずつ足を運ぶ頻度を増やして地域のつながりをつくっておくと良いと思います。ちなみに、西伊豆の夏は最高に盛り上がりますが、冬は海風が強く厳しい気候でもあるので、シーズンごとに通って実際の雰囲気を掴むことも大切です。相談がある場合は、はんばた市場で私に声をかけてみてください。

※はんばた市場は、西伊豆の漁港に立つ直売所。新鮮な海産物はもちろん、朝どれの野菜や西伊豆で製造している加工食品などを販売している。浜端(はんばた)は、西伊豆の方言で「海のすぐそば」を意味する。

小山優香

はんばた市場従業員
2018年移住

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